アルコール・アディクション医学の予防医学的展望
皆様方におかれましては益々ご健勝のこととお慶び申し上げます。
平素より日本アルコール・アディクション医学会におきまして、格別のご高配を賜り、心より感謝申し上げます。
さて、当学会理事長の職を、2024年9月より堀江義則先生から引き継ぐこととなりました神田秀幸と申します。日本アルコール・アディクション医学会は、精神医学、内科学、薬理学、法医学、公衆衛生学、心理学、看護学、精神保健学などさまざまな領域の研究者や治療者から構成された学際的な学術団体です。アルコール・タバコ・薬物から、ギャンブルやゲーム使用、市販薬のオーバードーズまで、古くから存在する問題から今日的課題まで、幅広いテーマを取り扱っています。歴代の理事長は、精神医学、法医学、薬理学の分野の方が歴任されておりましたが、今回公衆衛生学を専門とする私が理事長に選ばれたのも、アルコール・アディクション医学が予防や健康にシフトしてきている動向をいち早くけん引すべしといった学会の姿勢の表れではないかと、重責を感じております。図らずも、いわゆるコロナ禍の影響で生活様式が変化した今日、ポストコロナ時代としてアディクションの問題が顕在化しており、その対処も喫緊の社会的課題になってきています。当学会はアディクション医学を主眼に、従来の学問領域を超え、専門的な視点はもとより、学際的・分野横断的な視点から取り組んでいます。
折しも、2024年2月に厚生労働省が国内初となる「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」を公表しました。健康日本21(第二次)の最終評価で、目標を達成できなかったわずか数項目の中に、「生活習慣病のリスクを高める飲酒者の割合の低下」がありました。そのためこのガイドラインによって、飲酒に伴うリスクに関する知識の普及啓発を図り、国民がアルコール問題への関心と理解を深め、適切な飲酒量・飲酒行動の判断の一助となるよう作成されたものです。アルコール健康障害対策基本法に続き、このガイドラインは、政府がアルコールに対して国民の生命や健康を守る姿勢をみせた指針となっています。制度や指針はその後の社会実装、国民の行動変容につながる必要があります。私たちはこの動きに貢献すべく、学会として対策の推進や普及啓発、またこの政策の検証などを学術の面から尽力していきたいと考えています。
学会運営としては、学会員の増加を目標とし、「入りたい学会」「辞めない学会」を目指して参ります。「入りたい学会」のために、学会の魅力発信や教育コンテンツの充実、学術総会の健全な運営などに努めます。また「辞めない学会」としては、各種表彰制度や生涯教育の充実を図り、学会員であり続けたい学会となるように運営をしていきたいと思います。
理事長として誠心誠意努力してまいりますが、お気づきの点がありましたら忌憚なくお声をお寄せ下さい。会員の皆様方の本学会へのご参加と学会内が一層盛り上がっていきますようお力添えのほどをどうぞ宜しくお願い申し上げます。
日本アルコール・アディクション医学会
理事長 神田 秀幸